退職金に税金はいくらかかる?退職所得控除の計算方法

退職金には所得税・復興特別所得税と住民税がかかることがあります。

ただし、給与と同じように退職金全額へそのまま税率をかけるわけではありません。

退職金には**「退職所得控除」**があり、一般的な会社員なら原則として、

(退職金-退職所得控除額)×1/2

をもとに税金を計算します。

そのため、勤続年数が長く退職金が退職所得控除の範囲内なら、退職金に所得税・住民税がかからないケースもあります。

※本記事は2026年8月時点の税制をもとにしています。

退職金の税金はどう計算する?

一般的な退職金の計算は、大きく3段階です。

1.退職所得控除を計算
2.課税される退職所得を計算
3.所得税・住民税を計算

通常の給与所得とは別に計算される「分離課税」なので、長年働いた人ほど税負担が軽くなる仕組みになっています。

退職所得控除はいくら?

退職所得控除は勤続年数によって決まります。

勤続年数退職所得控除
20年以下40万円×勤続年数
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

20年以下で計算額が80万円未満になる場合は、最低80万円です。

勤続10年

40万円×10年=400万円

退職所得控除は400万円です。

勤続20年

40万円×20年=800万円

退職所得控除は800万円です。

勤続30年

800万円+70万円×(30年-20年)
=1,500万円

退職所得控除は1,500万円です.

勤続40年

800万円+70万円×20年
=2,200万円

退職所得控除は2,200万円です。

20年を超えると控除額が増えやすくなる

退職所得控除は、

20年目までは1年あたり40万円
21年目以降は1年あたり70万円

増えます。

そのため長期間勤務した人ほど、大きな退職金でも課税される部分が小さくなりやすい仕組みです。

勤続年数に端数がある場合は?

勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げます。

たとえば、

10年2か月 → 11年

として計算します。

国税庁の例でも、10年2か月の場合は11年として、

40万円×11年=440万円

の退職所得控除になります。

退職金1,000万円・勤続20年なら税金はいくら?

具体的に計算してみましょう。

1.退職所得控除

勤続20年なので、

40万円×20年=800万円

2.課税退職所得

退職金1,000万円から800万円を引きます。

1,000万円-800万円=200万円

一般的な退職金では、この残額の1/2が退職所得になります。

200万円×1/2=100万円

課税退職所得は100万円です。

3.所得税・復興特別所得税

2026年分では、課税退職所得195万円未満の所得税率は5%です。

100万円×5%=5万円

さらに復興特別所得税を含めると、

5万円×102.1%=5万1,050円

です。

4.住民税

退職所得にかかる住民税の標準税率は、

市区町村民税6%+都道府県民税4%=10%

です。

課税退職所得100万円なら、

100万円×10%=10万円

税金の合計

所得税・復興特別所得税:約5万1,050円
住民税:約10万円

合計すると、

約15万1,050円

です。

退職金1,000万円なら、概算の手取りは、

約984万8,950円

となります。

※一般的な退職手当の例です。短期勤続・役員・過去の退職金受取などがある場合は計算方法が変わります。

勤続30年で退職金1,500万円なら税金は0円?

勤続30年の退職所得控除は、

1,500万円

です。

退職金も1,500万円なら、

1,500万円-1,500万円=0円

なので、課税退職所得は0円です。

このケースでは、通常の計算上、退職金に対する所得税・住民税は発生しません。

つまり、

退職金が高額でも、勤続年数が長ければ税金が必ず高くなるわけではありません。

勤続30年・退職金1,700万円なら?

国税庁も2026年の計算例として、勤続30年・退職金1,700万円のケースを示しています。

退職所得控除は、

1,500万円

です。

課税退職所得は、

(1,700万円-1,500万円)×1/2
=100万円

所得税・復興特別所得税は、

5万1,050円

となります。

さらに標準的な住民税10%なら約10万円なので、税負担は合計約15.1万円が目安になります。

1,700万円の退職金に対して税金が170万円や300万円かかるという計算ではありません。

退職所得控除と1/2課税の効果が大きいためです。

「退職金の半分に税金がかかる」は正しい?

正確には違います。

一般的なケースでは、

退職金から退職所得控除を引いた「残り」の1/2

が課税対象です。

たとえば退職金2,000万円・控除1,500万円なら、

2,000万円の半分である1,000万円ではなく、

(2,000万円-1,500万円)×1/2
=250万円

が課税退職所得です。

住民税も退職時に引かれる?

退職金に対する住民税は、通常の給与に対する住民税とは少し扱いが異なります。

退職所得に対する住民税は、原則として退職金が支給されるときに特別徴収されます。

標準的な税率は、

市区町村民税6%
都道府県民税4%

の合計10%です。

退職金をもらったら確定申告は必要?

多くの会社員は、原則として退職金だけのために確定申告する必要はありません。

退職時に会社へ、

「退職所得の受給に関する申告書」

を提出していれば、会社が税額を計算して源泉徴収するためです。

そのため通常は、退職金を受け取った時点で課税関係が終了します。

申告書を提出しなかったら?

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、所得税等については退職金の支給額から**一律20.42%**が源泉徴収されます。

たとえば退職金1,000万円なら、

約204万2,000円

がいったん所得税等として源泉徴収される計算です。

本来の税額より多く引かれている場合は、確定申告で精算します。

退職時には申告書の提出を忘れないことが重要です。

勤続5年以下は「1/2課税」に注意

一般的な退職所得では、

(退職金-退職所得控除)×1/2

ですが、勤続年数が5年以下の場合には特別ルールがあります。

役員など

勤続5年以下の一定の役員等が受け取る退職金は、原則として1/2計算が適用されません。

一般社員

役員以外でも勤続5年以下の場合、退職金から退職所得控除を引いた残額のうち300万円を超える部分には1/2計算が適用されません。

短期間で高額な退職金を受け取る場合は注意が必要です。

2026年からiDeCoと退職金の受け取り方にも注意

2026年から特に注意したいのが、iDeCoなど確定拠出年金の老齢一時金と会社の退職金を両方受け取る人です。

2026年分以後は、確定拠出年金の老齢一時金を先に受け取り、その後会社の退職金を受け取る場合、一定のケースで前年以前9年以内に受け取った老齢一時金との勤続期間の重複が退職所得控除の計算に影響します。

以前より確認対象となる期間が長くなっています。

つまり、

「iDeCoも退職金も、それぞれ毎回フルに退職所得控除が使える」

とは限りません。

受取時期が近い場合は、退職所得控除が調整される可能性があります。

iDeCoと退職金は受け取る順番も重要

会社の退職金を先に受け、その後iDeCoの一時金を受け取る場合にも、過去の退職手当との重複期間を見る特例があります。

国税庁の2026年ルールでは、ケースによって前年以前19年以内の退職手当等との関係を確認します。

iDeCo残高が大きい人や退職時期が近い人は、実際に受け取る前に会社・金融機関・税務署や税理士などへ確認すると安心です。

同じ年に2社から退職金をもらったら?

同じ年に2か所以上から退職金を受け取る場合や、過去に別の退職金を受け取っている場合は、退職所得控除の計算が通常と異なることがあります。

転職歴が多い人や企業年金・iDeCoの一時金も受け取る人は、

「勤続年数だけで控除額を単純計算」

しないよう注意しましょう.

退職金の税金を考えるときのチェックポイント

退職金を受け取る前に、次を確認しておくと分かりやすいです。

  • 退職金はいくらか
  • 勤続年数は何年か
  • 退職所得控除はいくらか
  • 勤続5年以下ではないか
  • 役員退職金ではないか
  • 過去に退職金を受け取っていないか
  • iDeCoを一時金で受け取る予定があるか
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出したか

よくある質問

退職金500万円なら税金はいくら?

勤続年数によって変わります。

たとえば勤続20年なら退職所得控除は800万円なので、退職金500万円は控除額以内です。

一般的な計算では課税退職所得は0円となります。

退職金1,000万円なら税金はいくら?

勤続20年の場合の今回の例では、所得税・復興特別所得税と標準的な住民税を合わせて約15万1,050円です。

ただし勤続年数が違えば税額も変わります。

退職金2,000万円なら税金は高い?

金額だけでは判断できません。

勤続年数が長ければ退職所得控除も大きくなるため、2,000万円を受け取っても課税対象はかなり小さくなる場合があります。

退職金は給与と合算される?

原則として退職所得は給与所得などとは分けて税額を計算します。

そのため、退職した年の給与が高かったから退職金全額に高い所得税率がかかる、という仕組みではありません。

まとめ

退職金の税金を考えるときに最も重要なのは、退職金の額より先に勤続年数を確認することです。

退職所得控除は、

20年以下:40万円×勤続年数
20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

で計算します。

一般的な退職金では、

(退職金-退職所得控除)×1/2

が課税退職所得になります。

たとえば勤続20年・退職金1,000万円なら、今回の条件では税金は所得税・復興特別所得税と住民税を合わせて約15.1万円です。

一方、勤続30年で退職金1,500万円なら退職所得控除も1,500万円となり、通常の計算では課税退職所得は0円です。

さらに2026年からは、iDeCoの老齢一時金と会社の退職金を近い時期に受け取る場合の退職所得控除にも注意が必要です。

「退職金はいくらもらえる?」だけでなく、「税引後でいくら残る?」まで計算しておくことが大切です。

【関連記事】
退職金の平均はいくら?大企業・中小企業・勤続年数で比較

参考・出典

国税庁「退職金と税」
国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「令和7年度の税制改正により令和8年以後適用されるもの」
東京都主税局「個人住民税・退職所得」

タイトルとURLをコピーしました