変動金利から固定金利へ、全員がすぐに切り替えるべきというわけではありません。
判断するときに重要なのは、現在の変動金利と切り替え後の固定金利の差、住宅ローン残高、残りの返済期間、切り替え・借り換えにかかる費用、金利上昇に家計がどこまで耐えられるかです。
固定金利に変えれば将来の金利上昇リスクを抑えられる一方、一般的には変動金利より金利が高くなるため、切り替えた時点から返済負担が増えることがあります。住宅金融支援機構も、変動金利は一般に全期間固定金利より低い一方、金利上昇時には返済負担が増えるリスクがあると説明しています。
そのため、「金利が上がりそうだから固定へ」という理由だけで決めず、自分の住宅ローンで実際にいくら返済額が変わるのかを比較してから判断することが重要です。
変動金利から固定金利に変えるべき?
金利上昇によって毎月の返済額が増えると家計が厳しくなる人は、固定金利への切り替えを検討する価値があります。
反対に、住宅ローン残高が少ない、完済までの期間が短い、十分な貯蓄があるなど、金利が上がっても対応できる人は、必ずしも急いで固定金利に変える必要はありません。
全国銀行協会も、固定金利への切り替えだけではなく、家計の見直しや余裕資金による繰上返済などを含めて、利用者ごとの家計状況に応じて判断することが重要だとしています。
まずは次の5項目を確認しましょう。
- 現在の変動金利
- 固定へ変更した場合の金利
- 住宅ローン残高
- 残りの返済期間
- 固定へ変えた後の毎月返済額
この5つを確認すると、自分が固定金利へ切り替えるべきか判断しやすくなります。
固定金利へ変えた方がいい人
将来の金利上昇による返済額の増加を避けたい人は、固定金利と相性が良いといえます。
特に次のようなケースでは検討する価値があります。
返済額が増えると家計が厳しい
住宅ローンが家計に占める割合が高く、毎月の返済額が数万円増えるだけでも生活費や教育費に影響する場合です。
固定金利にすれば、固定期間中または全期間固定型なら返済額を予測しやすくなるため、将来の家計計画を立てやすくなります。固定金利は返済額が安定する一方、一般的には変動金利より当初の金利が高い点がデメリットです。
住宅ローン残高がまだ大きい
返済を始めて間もなく、ローン残高が大きいほど金利上昇の影響を長く受ける可能性があります。
残高が大きく返済期間も長い場合は、「変動金利が今後上昇した場合」と「固定金利へ変更した場合」の総返済額を比較しておくとよいでしょう。
残りの返済期間が長い
完済まで20年、30年と残っている場合、将来の金利を正確に予測することはできません。
多少金利が高くなっても返済額を確定させたい人にとって、固定金利は金利上昇リスクを抑える選択肢になります。
急いで固定金利に変えなくてもいい人
金利上昇に対応できる余力がある人は、変動金利を続ける選択肢もあります。
たとえば、
- ローン残高がすでに少ない
- 完済までの期間が短い
- 貯蓄が十分にある
- 繰上返済を予定している
- 固定金利への変更で返済額が大きく増える
といったケースです。
全国銀行協会は、金利上昇への備えとして、貯蓄を増やすことや繰上返済を行うことも選択肢になるとしています。
固定金利への変更だけが金利上昇への対策ではありません。
まず「金利差」を確認する
固定へ変える前に最も確認したいのが、現在の変動金利と固定金利の差です。
たとえば現在の変動金利より固定金利がかなり高ければ、切り替えた瞬間から毎月返済額や総支払利息が増える可能性があります。
一方、現在の変動金利と固定金利の差が小さければ、将来の金利上昇リスクを抑えるために固定金利へ変更する意味は大きくなります。
三井住友銀行も、変動金利と固定金利の水準を比較し、金利差や家計状況を踏まえて判断することが重要としています。
金利が上がってから固定に変えればいい?
変動金利が実際に大きく上がってから固定へ変更すればよい、とは限りません。
変動金利と固定金利では、影響を受ける市場金利が異なります。
変動金利は短期金利の影響を受けやすく、固定金利は長期金利の影響を受けます。そのため金利上昇局面では、変動金利が上昇する前に固定金利が上昇している場合があります。
つまり、
変動金利が上がったのを確認
→ 固定金利へ変更しようとする
→ すでに固定金利も上がっている
ということも考えられます。
将来の金利を当てようとするよりも、現在提示されている固定金利なら家計として受け入れられるかで判断する方が現実的です。
変動金利から固定金利へ変更する方法
大きく分けて2つあります。
同じ銀行で金利タイプを変更する
現在住宅ローンを借りている金融機関で、変動金利から固定金利期間選択型などへ変更する方法です。
金融機関や商品によって条件は異なりますが、変動金利から一定期間の固定金利へ変更できる商品があります。たとえば三井住友銀行では、変動金利型から固定金利特約型への変更を受け付けています。
同じ金融機関内で変更できれば、別の銀行へ借り換えるより手続きが簡単な場合があります。
ただし、
- 選べる固定期間
- 適用される金利
- 手数料
- 変更できる時期
は金融機関や契約内容によって異なります。
必ず現在借りている銀行で確認しましょう。
別の銀行へ借り換える
現在の住宅ローンを完済し、別の金融機関で新しい住宅ローンを組む方法です。
借り換えなら、現在の銀行にはない金利タイプや条件を選べる可能性があります。
一方で、新しく住宅ローンを契約するため、事務手数料、登記関係費用、司法書士報酬などの諸費用が発生します。全国銀行協会も、借り換えでは金利差だけでなく諸費用を含めて効果を判断する必要があるとしています。
「切り替え」と「借り換え」は違う
同じ金融機関で金利タイプだけを変えることと、別の金融機関へ借り換えることは別です。
同じ銀行での切り替えなら、比較的少ない手続きで変更できる場合があります。
一方、借り換えは新しい住宅ローン契約になるため、
- 新しい審査
- 事務手数料
- 抵当権の変更
- 登記費用
- 団体信用生命保険の確認
などが必要になります。
そのため、固定金利を検討するときはまず現在の銀行で金利タイプを変更できるかを確認し、その条件が悪ければ他行への借り換えを比較する順番が分かりやすいでしょう。
5年ルールがあれば金利が上がっても安心?
返済額がすぐに増えないからといって、金利上昇の影響がなくなるわけではありません。
変動金利・元利均等返済の一部の商品では、金利が上がっても毎月返済額を5年間変えない「5年ルール」や、見直し後の返済額を従来の125%以内に抑える「125%ルール」が採用されています。
ただし、これらはすべての住宅ローンに共通するルールではありません。
また、返済額が抑えられていても金利そのものが上がれば、返済額のうち利息の割合が増え、元金の減りが遅くなる可能性があります。急激な金利上昇時には未払利息が発生する商品もあるため、契約内容を確認する必要があります。
「5年ルールがあるから何もしなくても大丈夫」とは考えない方がよいでしょう。
固定金利に変える前に確認したい5項目
固定金利へ変更するか迷ったら、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
1. 現在の適用金利
銀行の基準金利ではなく、自分に実際に適用されている金利を確認します。
2. 固定へ変更した場合の金利
同じ銀行で固定金利へ変更した場合、何%になるのかを確認します。
3. 毎月返済額
現在と固定変更後で、毎月いくら違うかを比較します。
4. ローン残高と残り期間
残高が大きく残り期間も長ければ、金利変動の影響も長期化します。
5. 家計の余裕
変動金利がさらに上昇しても、
生活費・教育費・貯蓄を維持しながら返済できるか
を考えます。
この5項目を確認したうえで、固定金利による安心に追加コストを払う価値があるか判断しましょう。
借り換えると住宅ローン控除はどうなる?
借り換えをしただけで、必ず住宅ローン控除が受けられなくなるわけではありません。
国税庁によると、新しい住宅ローンが元の住宅ローン返済のためのものであることが明らかで、返済期間10年以上などの要件を満たせば、借り換え後も住宅ローン控除を引き続き受けられる場合があります。
ただし、借り換えによって住宅ローン控除の適用期間が新たに延長されるわけではありません。
住宅ローン控除を利用している人は、借り換え前に要件も確認しておきましょう。
よくある質問
変動金利から固定金利へいつでも変更できる?
金融機関や契約内容によって異なります。
変動金利から固定金利期間選択型への変更を受け付けている金融機関もありますが、選べる固定期間、手数料、変更可能日などには条件があります。
まず現在の住宅ローンを借りている金融機関に確認しましょう。
固定金利に変更すると必ず得?
必ず得になるわけではありません。
固定金利へ変更した後に市場金利があまり上昇しなければ、低い変動金利を続けた方が総返済額が少なくなる場合があります。
固定金利は「得を確定する商品」というより、将来の金利上昇リスクを減らし、返済額を安定させるための選択肢と考える方が分かりやすいでしょう。
変動金利が上がったらすぐ固定にすべき?
金利上昇だけを理由に即変更する必要はありません。
現在の金利差、ローン残高、残り期間、家計の余裕を比較して判断します。
固定金利がすでに大きく上昇している場合には、変更によって返済額が大きく増えることもあります。
繰上返済と固定金利への変更はどちらがいい?
どちらが有利かは家計状況によって異なります。
余裕資金があり、住宅ローン残高を減らせる場合は、繰上返済によって将来の利息負担と金利上昇リスクを小さくする方法もあります。全国銀行協会も金利上昇への対応策として繰上返済を挙げています。
ただし、繰上返済で手元資金を減らしすぎると、教育費や急な出費に対応しにくくなるため注意が必要です。
まとめ
変動金利から固定金利へ全員が切り替えるべきという答えはありません。
固定金利を検討するときは、
- 現在の変動金利
- 切り替え後の固定金利
- 住宅ローン残高
- 残りの返済期間
- 毎月返済額
- 家計の余力
- 切り替え・借り換え費用
を比較することが重要です。
金利が上がると家計が苦しくなる人は固定金利を検討する価値が高く、金利上昇に対応できる十分な余力がある人は変動金利を続ける選択肢もあります。
まず現在借りている金融機関で、固定金利へ変更した場合の適用金利と毎月返済額を試算してもらい、現在の変動金利と比較してから判断しましょう。
※本記事は2026年8月時点の住宅金融支援機構、全国銀行協会、国税庁、金融機関の公表情報をもとに作成しています。住宅ローンの商品内容、金利変更の可否、手数料、5年ルール・125%ルールの有無などは金融機関や契約によって異なります。


