「持ち家と賃貸、結局どちらが得なの?」
住宅を考えるとき、多くの人が一度は悩む問題です。
持ち家には、住宅ローンを完済すれば毎月の住居費を抑えやすいという利点があります。一方、賃貸には、家族構成や仕事の変化に合わせて住み替えやすいという利点があります。
ただし、どちらが得かは、毎月の住宅費だけでは判断できません。住む期間、住宅ローン金利、修繕費、老後の生活、災害リスクなどによって結果が変わるためです。
この記事では、持ち家と賃貸の違いを5つの項目で比較し、自分に合った選び方をわかりやすく解説します。
持ち家と賃貸に絶対的な正解はない
最初に知っておきたいのは、持ち家と賃貸のどちらか一方が、すべての人にとって必ず得になるわけではないということです。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、日本の住宅のうち持ち家が占める割合は約6割です。しかし、持ち家を選ぶ人が多いことと、持ち家が誰にとっても有利であることは同じではありません。
たとえば、同じ価格の住宅でも、次の条件によって実際の負担は変わります。
・住宅を購入する地域
・その住宅に住む年数
・住宅ローンの金利
・将来必要になる修繕費
・家族構成や転職の可能性
・住宅価格や家賃の変化
「家賃を払い続けるのはもったいない」「住宅を買えば資産になる」という考えだけで決めず、将来の暮らしまで含めて比較することが大切です。
比較1:最初に必要なお金
持ち家と賃貸では、入居時に必要になる費用が異なります。
持ち家の場合
住宅を購入するときは、物件価格とは別に、さまざまな費用が発生します。
・頭金
・住宅ローンの事務手数料や保証料
・登記費用
・不動産取得税
・火災保険料や地震保険料
・仲介手数料
・引っ越し費用
頭金を多く支払えば住宅ローンの借入額を減らせますが、手元の預貯金も減ります。生活費や急な出費に備える資金まで頭金に使わないよう注意が必要です。
賃貸の場合
賃貸住宅でも、契約時にまとまった費用が必要です。
・敷金
・礼金
・仲介手数料
・保証会社の利用料
・前家賃
・火災保険料
・鍵交換費用
・引っ越し費用
一般的には住宅購入より初期負担を抑えやすいものの、物件や地域によって契約条件は大きく異なります。
比較2:毎月・毎年かかる住宅費
持ち家は住宅ローン、賃貸は家賃だけを比べればよいわけではありません。
持ち家で継続的にかかる費用
持ち家では、住宅ローンの返済以外にも次のような費用がかかります。
・固定資産税、都市計画税
・火災保険料、地震保険料
・建物や設備の修繕費
・マンションの管理費
・マンションの修繕積立金
・駐車場代
戸建て住宅では、外壁や屋根、給湯器、水回りなどの修理費を自分で準備します。
マンションでは毎月、管理費や修繕積立金を支払うのが一般的です。将来の工事費が不足すると、修繕積立金が増額されたり、一時金が必要になったりする可能性もあります。
賃貸で継続的にかかる費用
賃貸住宅では、主に次の費用が必要です。
・毎月の家賃
・管理費、共益費
・契約更新料
・火災保険料
・保証会社の更新料
・駐車場代
建物そのものの大規模な修繕は原則として所有者が行います。ただし、入居者の故意や過失による損傷は、入居者が費用を負担する場合があります。
持ち家と賃貸を比較するときは、住宅ローン返済額と家賃だけではなく、税金や修繕費、管理費なども含めて考えましょう。
比較3:住宅ローン金利と家賃上昇のリスク
持ち家と賃貸には、それぞれ異なる負担増加のリスクがあります。
持ち家は住宅ローン金利に注意
変動金利型の住宅ローンでは、市場金利の動きによって適用金利が上がる可能性があります。
金利が上昇した場合、返済額や利息負担が増えることがあります。返済額の見直し方法は金融機関や契約内容によって異なるため、「変動金利ならすぐに毎月返済額が増える」とは限りません。
住宅ローンを利用する場合は、金利が上昇したときの返済額も試算しておくことが重要です。
賃貸は家賃が変わる可能性がある
賃貸住宅では、契約更新や周辺相場の変化などにより、家賃が上がる可能性があります。
ただし、貸主が自由に家賃を変更できるわけではなく、契約内容や法的な条件が関係します。
家賃が上がった場合でも、別の住宅に移る選択肢がありますが、新しい契約費用や引っ越し費用が必要になります。

比較4:老後の住まいと生活の安定
老後の住居費は、持ち家と賃貸を選ぶうえで重要なポイントです。
持ち家の老後
住宅ローンを退職前に完済できれば、老後の毎月の住居費を抑えやすくなります。
ただし、住宅ローンを完済しても、住宅費が完全になくなるわけではありません。
・固定資産税
・火災保険料、地震保険料
・修繕費
・マンションの管理費、修繕積立金
築年数が進むほど、外壁、屋根、水回り、給湯器などの修繕が必要になる可能性があります。老後資金とは別に、住宅の維持費も準備しておく必要があります。
賃貸の老後
賃貸の場合、住宅を所有するための大きな借入れを避けやすく、年齢や生活状況に合わせて住み替えられます。
一方、住み続ける限り家賃の支払いが必要です。年金生活になった後も無理なく払える家賃かどうかを確認しておきましょう。
高齢者の入居では、家賃滞納や孤独死、残置物などを心配する貸主がいることも課題です。2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行され、高齢者などが住宅を確保しやすくするための制度整備が進められています。
それでも、希望する地域や条件で必ず契約できるとは限りません。老後も賃貸で暮らす予定なら、家賃だけでなく保証人や保証会社、利用できる支援制度も確認しておくと安心です。

比較5:災害・資産価値・住み替えのリスク
住宅は長期間利用するため、災害や資産価値の変化も考える必要があります。
持ち家のリスク
持ち家が地震、水害、土砂災害などで被害を受けた場合、修理や再建の費用が発生します。
住宅が被害を受けても住宅ローンの返済が残る可能性があるため、購入前に次の点を確認しましょう。
・自治体のハザードマップ
・建物の耐震性能
・火災保険と地震保険の補償内容
・土地や建物の将来の売却可能性
・住宅ローン残高
住宅は資産になりますが、購入時と同じ価格で売却できるとは限りません。建物の老朽化や人口減少、周辺環境の変化によって資産価値が下がることもあります。
賃貸のリスク
賃貸住宅では、建物に大きな被害があった場合に別の住宅へ移りやすいという利点があります。
一方、家財の損害や引っ越し費用、仮住まいの費用などは入居者自身の負担になる場合があります。また、災害後は周辺地域の賃貸物件が不足し、希望する住宅を確保しにくくなる可能性もあります。
賃貸でも火災保険の補償内容やハザードマップを確認しておきましょう。

持ち家が向いている人
次の項目に多く当てはまる人は、持ち家が選択肢になりやすいでしょう。
・同じ地域に長期間住む予定がある
・収入が比較的安定している
・住宅ローンを無理なく返済できる
・修繕費や税金を計画的に準備できる
・間取りや設備を自分好みに変更したい
・老後の住居を確保しておきたい
ただし、「住宅ローンを借りられる金額」と「無理なく返せる金額」は異なります。教育費や老後資金、生活予備費を残せる返済計画かどうかを確認しましょう。
賃貸が向いている人
次の項目に多く当てはまる人は、賃貸の利点を生かしやすいでしょう。
・転職や転勤の可能性がある
・家族構成が今後変わる可能性が高い
・住宅の修繕や管理を自分で行いたくない
・まとまった購入資金を手元に残したい
・災害や周辺環境の変化に合わせて移動したい
・一つの地域に長く住む予定が決まっていない
賃貸を選ぶ場合も、家賃を払い続けられるよう、老後を含めた資金計画が必要です。
迷ったときに確認したい5つの質問
持ち家か賃貸か迷ったら、次の5つを確認してみましょう。
- 今の地域に何年間住む予定か
- 収入が減っても住宅費を支払えるか
- 頭金を支払った後も十分な預貯金が残るか
- 税金や修繕費、金利上昇に対応できるか
- 転職、介護、子どもの独立などに合わせて住み替える可能性があるか
将来の予定がまだ固まっていない場合は、急いで購入せず、賃貸で生活しながら資金を準備する方法もあります。
反対に、住みたい地域や家族構成が固まり、長期間住む予定がある場合は、持ち家を具体的に検討しやすくなります。
まとめ
持ち家と賃貸のどちらが得かは、単純な住宅ローン返済額と家賃の比較だけでは決められません。
持ち家は、住宅ローン完済後の住居費を抑えやすく、老後の住まいを確保しやすいことが利点です。一方で、税金、修繕費、金利上昇、災害、資産価値の下落といったリスクがあります。
賃貸は、仕事や家族構成に合わせて住み替えやすく、大規模な修繕を自分で負担しないことが利点です。一方で、住み続ける限り家賃が必要になり、老後の入居や住居費も考えておかなければなりません。
まずは毎月の支払額だけで判断せず、少なくとも次の費用を含めて比較しましょう。
・初期費用
・住宅ローンの利息または家賃
・税金、管理費、更新料
・修繕費
・保険料
・住み替え費用
自分の収入、家族構成、住む期間、老後の暮らし方に合う選択をすることが大切です。
※本記事は2026年8月15日時点の公表情報をもとに作成しています。住宅購入や住宅ローン契約を行う際は、金融機関、不動産会社、自治体などの最新情報をご確認ください。
参考資料
・総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html
・国土交通省「住まいにはどんな費用がかかる?」
https://www.mlit.go.jp/sumai_literacy_pf/knowledge02/0005/
・住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」
https://www.jhf.go.jp/about/research/loan/user/index.html
・国土交通省「住宅セーフティネット制度」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html


