年金3号は廃止される?2030年改正に向けた議論と3つの影響

税金・社会保障

「年金が廃止されるの?」「専業主婦は将来、年金を受け取れなくなる?」

2026年8月、会社員などに扶養されている配偶者が対象となる「国民年金第3号被保険者制度」の縮小に向けた議論が注目を集めています。

Googleトレンドでも「年金 廃止」という検索が急増していますが、日本の公的年金制度そのものの廃止が決まったわけではありません。また、第3号被保険者制度についても、現時点で廃止時期や対象者が正式に決定されたわけではありません。

この記事では、2026年8月15日時点の厚生労働省などの公表資料をもとに、第3号被保険者制度とは何か、現在決まっていること、制度が縮小された場合に考えられる3つの影響をわかりやすく解説します。

「年金廃止」は本当?

結論からいうと、日本の公的年金制度が廃止されるという事実はありません。

現在話題になっているのは、公的年金全体の廃止ではなく「国民年金第3号被保険者制度」の対象を将来的に縮小・見直しする議論です。

厚生労働省の社会保障審議会年金部会では、社会保険の適用対象を広げることによって、第3号被保険者制度を段階的に縮小していく方向性が示されています。

一方、制度をどのように見直すのか、誰を対象外にするのか、いつから変更するのかといった具体的な内容は確定していません。

SNSなどで見かける次のような情報は、2026年8月15日時点では確定事項ではありません。

・公的年金制度そのものがなくなる
・専業主婦は年金を一切受け取れなくなる
・2030年に第3号被保険者制度が完全廃止される
・これまで納めた年金保険料が返金される

報道の見出しやSNSの投稿だけで判断せず、制度全体と第3号被保険者制度を分けて考える必要があります。

国民年金第3号被保険者とは?

国民年金の加入者は、働き方などによって第1号、第2号、第3号に分かれています。

第1号被保険者

自営業者、フリーランス、学生、無職の人などが該当します。

原則として、自分で国民年金保険料を納めます。

第2号被保険者

会社員や公務員など、厚生年金に加入している人が該当します。

年金保険料は給与や賞与から差し引かれ、勤務先も保険料の一部を負担します。

第3号被保険者

厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者が該当します。

第3号被保険者は、国民年金保険料を個別に納めなくても、加入期間が老齢基礎年金の保険料納付済期間として扱われます。

一般的には、会社員などに扶養される専業主婦・専業主夫や、一定の収入以下で働く配偶者が対象です。

ただし、勤務時間、賃金、勤務先の規模などによっては、年収が130万円未満でも勤務先の厚生年金に加入する場合があります。

なぜ第3号被保険者制度が見直されるの?

第3号被保険者制度は1986年に導入されました。

当時は、夫が会社員として働き、妻が家事や育児を担う世帯が現在より多く、専業主婦の老後の所得を保障する役割がありました。

しかし、共働き世帯や単身世帯が増え、働き方や家族構成が大きく変化しています。

現在は主に次のような点が議論されています。

・保険料を納める共働き世帯や単身者との公平性
・社会保険料の負担を避けるために働く時間を抑える「年収の壁」
・女性の就業や働き方に与える影響
・育児、介護、病気などで十分に働けない人への配慮
・制度を変更した場合の家計負担

単純に制度を廃止すると、育児や介護などの事情で働けない人の負担が急増する可能性があります。そのため、対象者の生活実態を確認しながら、慎重に制度設計を進める必要があります。

2030年に廃止されるの?

一部報道では、2030年の次期年金制度改正に向けて、第3号被保険者制度の対象縮小を検討すると伝えられています。

ただし、これは「2030年に完全廃止することが決定した」という意味ではありません。

厚生労働省のこれまでの議論では、短時間労働者への社会保険適用を拡大し、第3号被保険者に該当する人を徐々に減らしていくことが基本的な方向性とされています。

その先の制度の在り方については、次のような論点が残されています。

・第3号被保険者制度を完全に廃止するのか
・働いている第3号被保険者だけを対象外にするのか
・育児や介護中の人に特例を設けるのか
・保険料負担が急に増えないよう経過措置を設けるのか

現時点では議論の段階であり、具体的な変更内容や実施時期は決まっていません。

影響1:勤務先の厚生年金に加入する人が増える可能性

第3号被保険者制度の縮小は、短時間労働者への社会保険適用拡大と関係しています。

勤務条件を満たすパートやアルバイトは、第3号被保険者ではなく、勤務先の厚生年金と健康保険に加入することになります。

厚生年金に加入すると、給与から社会保険料が差し引かれるため、加入直後の手取りは減る可能性があります。

一方で、保険料は勤務先も負担し、将来受け取る老齢厚生年金が増える可能性があります。また、一定の要件を満たせば、傷病手当金や出産手当金などの保障も受けられます。

そのため、社会保険への加入を「負担増」だけで判断するのではなく、将来の年金額や保障内容も合わせて確認することが重要です。

影響2:国民年金保険料を自分で納める可能性

第3号被保険者の対象から外れても、勤務先の厚生年金に加入できない場合は、第1号被保険者として国民年金保険料を自分で納める可能性があります。

この場合、世帯の社会保険料負担が増えることが考えられます。

ただし、所得が少ない場合や失業した場合などには、国民年金保険料の免除・納付猶予制度を利用できる可能性があります。

制度が見直される場合には、育児、介護、病気などによって就労が難しい人に対して、どのような配慮や支援を設けるのかが重要な論点になります。

影響3:「年収の壁」を意識した働き方が変わる可能性

現在は、社会保険料の負担を避けるために、勤務時間や収入を一定範囲に抑える人がいます。

これが、いわゆる「106万円の壁」や「130万円の壁」です。

2025年に成立した年金制度改正法では、短時間労働者の社会保険加入を判断する賃金要件や企業規模要件を段階的に撤廃し、加入対象を広げていくことが決まりました。

厚生労働省によると、月額8.8万円以上という賃金要件、いわゆる「106万円の壁」は、最低賃金の状況を踏まえて2026年10月に撤廃される予定です。

今後は年収だけでなく、週の労働時間などが社会保険加入を判断する重要な基準になります。

働く時間を増やすことで社会保険に加入する人が増えれば、第3号被保険者の人数は段階的に減少していくと考えられます。

これまでの第3号期間はどうなる?

制度が将来見直されたとしても、これまで第3号被保険者として正しく記録された期間が、直ちになかったことになると決まったわけではありません。

過去の加入記録と将来の制度変更は分けて考える必要があります。

自分の加入記録は、日本年金機構の「ねんきんネット」や、毎年届く「ねんきん定期便」で確認できます。

特に次のような経験がある人は、加入記録に漏れがないか確認しておきましょう。

・配偶者が転職または退職した
・自分の収入が扶養基準を超えた
・離婚した
・配偶者が65歳になった
・扶養から外れた後の切り替え手続きをしていない

必要な切り替えが遅れている場合は、勤務先や年金事務所への確認が必要です。

今のうちに家計が確認したい5項目

制度の詳細が決まっていないため、現時点で慌てて働き方を変える必要はありません。

まずは次の5項目を確認しておきましょう。

1.現在の年金区分

自分が第1号、第2号、第3号のどれに該当しているかを確認します。

2.勤務先の社会保険加入条件

パートやアルバイトで働いている場合は、週の所定労働時間や勤務先の加入条件を確認しましょう。

3.年間収入の見込み

給与だけでなく、賞与や複数の勤務先からの収入も確認します。

4.社会保険加入後の手取り

社会保険料だけでなく、将来増える可能性のある年金額や保障内容も含めて判断する必要があります。

5.ねんきんネットの加入記録

これまでの加入期間と将来の年金見込額を確認しましょう。

制度変更が正式に決まった場合は、厚生労働省、日本年金機構、勤務先からのお知らせを確認してください。

遺族年金の見直しとは別の制度

第3号被保険者制度の議論と、2028年4月から予定されている遺族厚生年金の見直しは別の制度です。

SNSでは「主婦の年金が廃止される」「配偶者が亡くなると5年で年金がなくなる」といった情報が混在することがあります。

しかし、第3号被保険者制度は国民年金への加入区分に関する仕組みであり、遺族厚生年金は厚生年金加入者などが亡くなった場合に一定の遺族へ支給される年金です。

制度の目的も対象者も異なるため、混同しないようにしましょう。

まとめ

2026年8月に検索が増えている「年金廃止」は、日本の公的年金制度そのものが廃止されるという意味ではありません。

現在議論されているのは、会社員や公務員などに扶養される配偶者が対象となる「国民年金第3号被保険者制度」の縮小・見直しです。

重要なポイントは次のとおりです。

・公的年金制度の廃止は決まっていない
・第3号被保険者制度の完全廃止も決まっていない
・2030年の改正に向けた議論が報じられている段階
・社会保険の適用拡大によって第3号被保険者は段階的に減る可能性がある
・対象者、実施時期、経過措置などの詳細は今後検討される

制度が変わる可能性を過度に恐れるのではなく、自分の年金区分、勤務条件、収入、加入記録を確認しておくことが大切です。

今後、具体的な制度案や法案が公表された場合には、厚生労働省や日本年金機構などの公式情報を確認しましょう。

※この記事は2026年8月15日時点の公表資料をもとに作成しています。第3号被保険者制度の見直し内容や実施時期は、今後変更される可能性があります。

参考資料

・厚生労働省「社会保障審議会年金部会における議論の整理」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001362321.pdf

・厚生労働省「年金・社会保険の加入対象の拡大について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html

・厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」
https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_003.html

・日本年金機構「ねんきんネット」
https://www.nenkin.go.jp/n_net/

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