住宅ローンは変動金利と固定金利のどちらがよいか。新しく借りるときは、当初の月返済だけでなく、金利上昇後も生活費・教育費・貯蓄を守れるかで比較することが大切です。変動を選ぶなら上昇分を引き受ける余力、全期間固定を選ぶなら当初から支払う返済額を続けられる余力が必要です。
本記事では4,000万円・35年の同じ借入条件で、金利が変わらない場合と、5年後・10年後に上がる場合を独自に計算します。将来の金利を予測するのではなく、どの条件なら家計が持ちこたえられるかを確認するための比較です。
公式資料確認日:2026年9月30日。以下の年1%・2%・3%は計算用の仮定であり、現在の銀行提示金利や将来予測ではありません。手数料・保証料・団信上乗せ・税金・住宅ローン控除は試算に含めていません。
住宅ローンの金利は3種類に分けて比較する
「固定」という言葉には、全期間固定と固定期間選択型があります。10年固定を35年間の返済額が確定する商品と受け取ると、11年目以降の家計計画を誤るおそれがあります。
| 金利タイプ | 確定する範囲 | 契約前に確認すること |
|---|---|---|
| 変動金利 | 将来の適用金利は未確定 | 金利と返済額の見直し時期、上昇時の元金の減り方 |
| 固定期間選択型 | 選んだ固定期間の金利 | 期間終了後の金利、優遇幅、再選択時の手数料 |
| 全期間固定金利 | 契約で定める返済期間全体の金利 | 当初返済額、段階金利の有無、融資費用・保障条件 |
住宅金融支援機構の金利タイプの説明資料でも、この3種類が区別されています。全期間固定でも、契約時から当初と後半の金利が異なる設計はあり得るため、「毎月同額」という名称だけの理解で済ませず、返済予定表を確認します。
4,000万円・35年の当初返済額を比較する
元利均等返済・ボーナス返済なし・月払いで計算します。まず金利が完済まで変わらないと仮定すると、年1%は月112,914円、年2%は月132,505円です。差は月19,591円、年約23.5万円になります。
この差額は、変動を選んだ人が将来に備えて積み立てられる候補額です。ただし、日常の支出に使い切ってしまえば金利上昇への備えにはなりません。「月2万円安いから借入額を増やせる」と考える前に、差額を残せるかを家計表に入れます。
一方、全期間固定の返済額が今の家計で厳しい場合は、変動にすれば問題が解決するとは限りません。頭金、物件価格、借入額など購入計画自体を見直すことも必要です。
5年後・10年後の上昇で総利息はどう変わる?
次の表では、当初年1%のローンが途中から年2%または3%になり、その後は一定と仮定します。変更時点の残高を残り期間で返し切るよう、月返済を再計算しています。5年ルール・125%ルールによる返済額の据え置きは適用していません。実際の契約の再現ではなく、金利上昇の経済的な負担を比べるためのモデルです。
| 仮定した金利の経路 | 当初の月返済 | 変更後の月返済 | 35年間の総利息 |
|---|---|---|---|
| 年1%のまま | 112,914円 | 112,914円 | 約742万円 |
| 5年後から年2% | 112,914円 | 129,758円 | 約1,349万円 |
| 5年後から年3% | 112,914円 | 148,008円 | 約2,006万円 |
| 10年後から年3% | 112,914円 | 142,078円 | 約1,617万円 |
| 当初から全期間年2% | 132,505円 | 132,505円 | 約1,565万円 |
くらしと円による独自計算。円未満は内部計算で保持し、月額は表示時に四捨五入。最終返済の端数処理や金融機関の計算方式によって実額は異なります。
上昇後の金利だけでは損得を決められない
年2%へ上昇した例でも、最初の5年間が年1%なら総利息は約1,349万円で、当初から年2%の約1,565万円より小さくなります。逆に5年後に年3%になる例では、全期間年2%より約441万円大きくなります。
同じ年3%への上昇でも、5年後と10年後では総利息が約388万円違います。したがって「変動が何%になれば固定の勝ち」という単一の数字は、上昇時期や残高、費用を決めずに出せません。この表から分かるのは上昇が早く、残高が大きいほど影響を受けやすいということです。
家計の残額で選ぶ:手取り40万円の例
月返済だけを見ても選択は終わりません。世帯手取り40万円、生活費・教育費・必要な貯蓄などの合計を月22万円、管理費・修繕積立金・固定資産税・保険などローン以外の住居費を月4万円と仮定します。手取りから26万円を引いた14万円が、ローン返済と予備費に使える額です。
| 返済条件 | ローン返済 | 家計に残る額/月 |
|---|---|---|
| 年1%の当初 | 112,914円 | 27,086円 |
| 全期間年2% | 132,505円 | 7,495円 |
| 5年後に年3% | 148,008円 | -8,008円 |
この仮定では、変動の当初返済は可能でも、5年後の上昇時には予備費がなくなり赤字になります。固定なら上昇を避けられる一方、残額7,495円で想定外の支出に対応できるかという別の問題が残ります。どちらかを選べば安全になる家計ではないため、借入額や支出の見直しが先です。
手取り50万円で他の条件が同じなら、上昇後も月91,992円残ります。ただし休職・育休・賞与減少、教育費増加などを同時に入れると結果は変わります。今の収入だけで35年分の余裕を判断せず、数年後の家族の支出を別の列で計算しましょう。
変動金利を検討するときの3つの条件
- 当初の安い返済額と、より高い金利で試算した返済額との差を毎月残せる。
- 購入諸費用や頭金を払った後も、生活費・修繕・収入減に備える現金がある。
- 適用金利、残高、返済予定表を定期的に確認し、支出や借入額を調整できる。
この条件を満たす人でも変動が必ず有利とは限りません。将来の金利は未確定です。安い当初返済によって生まれる余裕を、自分がどう管理するかまで決めておくことが重要です。金利差を投資に回す場合も、相場下落と返済増加が同時に起きる可能性を考え、投資資産を生活防衛資金と同じものとして数えないようにします。
全期間固定を検討するときの3つの条件
- 提示された固定金利の返済額を、住宅維持費込みで無理なく続けられる。
- 教育費など将来の支出が増える時期に、ローン返済まで変動させたくない。
- 当初の金利差を払っても、返済計画を確定させる価値が自分の家計にある。
固定の価値は、必ず総利息が最小になることではなく、契約で決まる返済負担の見通しを立てやすいことです。借入後に市場金利が下がっても、自動的に適用金利が下がるわけではありません。また、全期間固定でも失業や修繕費の増加は防げないため、現金の備えは必要です。
10年固定を選ぶなら11年目を先に試算する
固定期間選択型は、一定期間の金利変動を避けたい場合の選択肢です。しかし10年後に子どもの進学と固定期間終了が重なるなら、家計負担が増える時期に金利が未確定になる点を確認します。
比較時には、固定期間終了後の優遇幅、再固定・変動への変更条件、手数料を見積書に書いてもらいます。当初優遇が大きい商品を、完済まで同じ優遇が続く商品と同じ条件で扱わないことが大切です。
5年ルール・125%ルールは利息の上限ではない
一部の変動金利・元利均等返済では、金利が変わっても一定期間は返済額を据え置き、返済額見直し時の増加を制限する仕組みがあります。これは適用金利や総支払利息を抑える制度ではありません。利息が増えれば同じ返済額の中で元金に回る額が減り、残高の減り方が遅くなります。
三菱UFJ銀行の金利タイプ説明では、同行の変動金利・元利均等返済における5年・125%ルールと、急上昇時の未払利息について説明されています。商品や返済方式で違うため、すべての住宅ローンに共通すると考えず、自分の契約で確認します。
今回の試算はこの据え置きを再現していません。銀行の返済予定表とは月額が違い得る一方、「金利が上がっても返済額が変わらないから負担は増えていない」という誤解を避ける比較として使えます。
契約前に同じ条件で見積もるチェックリスト
国土交通省の住宅ローン金利リスク資料を参考に、金利上昇を含む返済負担を確認します。見積もりは次の項目を揃えると比較しやすくなります。
- 借入額・返済期間・返済方式・ボーナス返済の有無を同じにする。
- 広告金利ではなく、自分に適用される金利と融資実行時の決定条件を確認する。
- 事務手数料・保証料・団信上乗せなどを含めた費用を書き出す。
- 変動では金利上昇後、固定期間選択型では期間終了後の返済例を出してもらう。
- 住宅維持費・収入減・教育費増加を入れ、毎月残る金額を確認する。
初めて購入予算を決める場合は、返せる額と費用の順番から整理すると、金利の低さだけで物件価格を決めることを防げます。

よくある疑問
変動が上がったら固定に変えればよい?
変更時の固定金利が今と同じとは限りません。固定側が先に上昇することもあり、将来の変更条件は商品で異なります。「今は変動、必要になったら安い固定」という前提で購入予算を増やさないようにしましょう。すでに借りている人の切り替えは、残高・残期間・費用から判断します。

半分ずつ変動と固定にすると安心?
利用できる商品の組み合わせなら金利リスクを分けられます。ただし変動部分の負担は増え得ますし、契約や費用が複雑になることもあります。全額変動・全額固定と同じ総借入額で月額と費用を比較し、割合だけで安全性を判断しません。
住宅ローン控除を引けば返済できる場合は?
控除は月々の返済を自動的に減らすものではなく、要件や納税額にも左右されます。まず控除を入れない現金収支で返済できるかを確認し、還付などは別に管理すると資金繰りを把握しやすくなります。
選ぶ順番は「家計の余力→上昇試算→金利と費用」
初めて住宅ローンを組むなら、手取りから生活費・将来の必要貯蓄・ローン以外の住居費を引き、返済に使える額を先に決めます。その後、変動の上昇例と固定の提示額を同じ借入条件で比較してください。
金利の将来を当てることより、どの条件でも守りたい支出を決めることが先です。変動の安さで生まれる差額を残せるか、固定の返済額で予備費を維持できるか。この2つに答えられない場合は、商品選択だけでなく借入額から見直すことが、購入後の家計を守る判断につながります。


